原子はどのように生まれたのか

自分は大学と大学院で化学を専攻し、化学会社で働いてきた。いわば化学漬けの半生だった。大学1年の時、当時103あった周期表の元素名と原子番号を全部覚えたものだ。でも、今まで元素がどのように生まれたのかは知らなかった。最近になって、本「時間の終わりまで 物質、生命、心と進化する宇宙:ブライアン・グリーン 」で、元素が生まれた順番と生成条件を知った。どんな複雑な原子でも、作り方のレシピは決まっている。陽子と中性子が結合出来る条件を満たせば良いのだ。始まりは160億年前のビッグバンだ。でも、ビッグバンで生まれた原子はたったの5つ。水素とヘリウムと重水素とヘリウム3とリチウムだ。次に十分に質量の大きな恒星は、そこからさらに原子核同士を融合させて、周期表の先のほうにある、より複雑な元素を合成した。ヘリウムを融合させて炭素と酸素を作り、更に炭素を融合させてナトリウムとネオンを作った。そして更なる核融合でマグネシウム、硫黄、ケイ素、鉄が合成された。鉄の陽子と中性子は、あらゆる元素の中でもっとも強く結合しているので、このプロセスは一旦停止した。しかし核融合が停止すると、物質は猛烈な勢いで恒星の中心部に向かって落下し、爆発する。その衝撃波によって鉄以降の原子が生成されたという。化学を学び始めて60年を経過したが、今になってやっと原子の起源を知った次第。感無量。