新しい日焼け止め技術

京都大学と岡山理科大学の合同研究チームが「メラニンの生合成には、銅だけでなく亜鉛も必要不可欠だ」とする研究結果を世界で初めて発表した。メラニンは、皮膚や毛髪、瞳の色などを構成する黒色の色素で、紫外線から肌を守る重要な物質だ。でも、紫外線を多く浴びると体内で過剰にメラニンが作られ、日焼けしたりシミが出来たり、最悪の場合は皮膚がんを引き起こす。だから、この研究は、メラニンを生合成させるためのものではなく、メラニンを生合成させないためのものなのだ。従来、メラニンの生合成は、チロシナーゼを銅が活性化するためだと言われていた。だから、現在市販の日焼け止めクリームには、銅を不活性化させる成分が含まれているのだ。ところが、この研究により、銅が結合して機能すると考えられてきたチロシナーゼ関連タンパク質の発現には、ZNTが輸送する亜鉛が不可欠であることが分かったのだ。ZNTとは、細胞内の小胞体やゴルジ体に局在する亜鉛を運ぶ複合体だ。つまり、ZNTを機能させないか、または亜鉛を遮断すればメラニンの生合成が抑えられることになる。今後、紫外線カット効果が高い、新たな日焼け止めが開発されることになるのだろう。メラニンの生成は養殖魚の異変などとも関連するため、黒変が問題となる食材料の改良などにも活用が期待される。