技能実習制度の行方

外国人の日本での労働のあり方を検討する政府の有識者会議が、いまの技能実習制度の廃止を求める提言の試案をまとめたとのこと。技能実習は1993年に始まった。当初は、途上国への技術移転が可能になるし、日本にとっても働き手として重宝だった。極めてWIN-WINの制度だった。ところが最近では、企業による賃金不払いのほか実習生の就労先からの失踪といった問題も顕在化している。現行の技能実習では原則、転職ができず人権保護の観点で海外から批判を受けてきた経緯もある。今や日本で稼ごうと来日する若者などいなくなってしまった。言わば、体の良い奴隷制度と化していたのだ。有識者会議は、人材確保と人材育成の双方を目的とした新しい制度に衣替えするよう提起した。転職を可能にし、日本語修得の仕組みを設け、不適切な団体を排除出来るよう管理・監督体制を厳格にすることを提案している。一見素晴らしいようだが、時既に遅し。既に、途上国と日本の賃金が同等か逆転しつつあるのだ。今や、日本人が豪州などに出稼ぎに行く時代だ。有識者会議の提案は余りにも遅すぎた。20年前に提案していれば、有識者の良識・知恵と言われたかもしれないが。有識者会議のメンバーには有識者がいないようだ。