福島原発処理水放出の是非

政府が福島原発の処理水を今年の春から夏ごろに海洋放出する方針を決定した。海底トンネル経由で1km先の海中に放出するための工事が既に始まっている。政府は漁業者向けに、新たな漁場の開拓や漁船の燃料コスト削減などにかかる経費にあてる500億円の基金を創設し、風評被害が起きたときに水産物を買い取る費用などを盛り込んだ300億円の基金も用意した。地元漁連に対し「関係者の理解なしに海洋放出はしない」と約束しているが、理解を得たかどうかはハッキリしない。放射性汚染物質が環境に与える影響を30年以上研究してきた英国の環境科学者は、福島原発の処理水の放出は取りうるなかでの最善策だと言っている。現在福島原発内には100万tの汚染水が保管されている。汚染水からコバルト60、ストロンチウム90、セシウム137などは除去されるが、水素の放射性同位体であるトリチウムは除去されずに残る。このトリチウムが残ったものを処理水という。トリチウム水は、化学的性質が通常の水とまったく同じであるため現代技術での除去は不可能だ。でも幸いなことに生物蓄積係数は1で、生体内に大量に蓄積することはない。だから過去何十年にもわたって世界各地の原子力施設で処理水の海洋放出が行われてきたのだ。但し、「有機結合型トリチウム」は問題だ。生物蓄積係数が1万と高い。有機結合型トリチウムの有無の確認は必須だ。政府は、トリチウム水について漁業者にも国民にも世界にも懇切丁寧な説明をして納得を得る必要がある。