戦犯かヒーローか

3回目の緊急事態宣言を決めた23日に、菅首相は五輪の開催基準を問われ「安全安心の大会にする」とはぐらかした。開催まで3ヶ月と迫っている。大阪ではコロナ重症病床がキャパを超え医療崩壊寸前だ。PCR検査を絨毯爆撃的に実施して、モグラ叩きで感染者を隔離する必要があるが、未だにPCR検査の数は増えない。ワクチンに至っては、未だに2%に届かず、今年一杯でも終わりそうもない。どの面を下げて「安全安心」などと言えるのだろう。SNSでは世界中から「五輪を中止せよ」の大合唱だ。米紙ニューヨーク・タイムズは「五輪を考え直す時」、米誌フォーブスは「日本は緊急事態宣言を発令したが、五輪中止は考えてすらいない」、あるIOC委員は「開催の可否は医療や保健の専門家が下すべきだ。開催されるなら、明確で透明性のある説明が必要だ」、感染症専門家は「大会関係者の隔離もワクチン接種も強制でなければ、感染爆発が起きても不思議ではない」と指摘している。東京五輪開催を決めたのはIOCだが、中止を決める権限のある者は誰なのだろう。今の状況はまるで、太平洋戦争に突き進む昔の日本とそっくりだ。もし菅が決断して五輪返上を宣言すれば、一躍世界のヒーローとなり、首相の座も盤石になるはずなのに。戦犯となるかヒーローとなるかの分かれ道に立たされている。