両方丸々益

北海道興部町と大阪大学は、牛の糞尿から発生するメタンガスからメタノールとギ酸を製造することに世界で初めて成功したと発表した。牛は牛乳の3倍もの量の糞尿を排泄するが、処理しきれていないのが現状。しかも糞尿は生乳の品質を落とす原因になっている。一方、生成されるメタノールは燃料電池の燃料として使われている工業用アルコールで、国内生産が出来ず全量を輸入に頼っている。ギ酸は牛の飼料を水分調整する添加剤として使われているし、水素を取り出すことが出来るのでこれからの水素社会に利用出来る。大岡裁きは三方一両損で丸く収めたが、この技術は両方丸々益だ。通常、メタンガスと酸素を反応させると二酸化炭素と水に変わってしまう。成功したポイントとなった物質は「二酸化塩素」とのこと。二酸化塩素に着目したのは企業から「どうして二酸化塩素に殺菌消毒機能があるのか?」との相談を受けたのがきっかけとのこと。その相談と真摯に向き合うことで、今回の成功に辿り着いたという。異なるフィールドから情報を得て、自分なりに仮説を立て、突き詰めていくと新しい発見に辿り着くこともある。専門を深めることも重要だが、学際研究も大切という事例だ。