メイの勝ち?ジョンソンの勝ち?

英国のジョンソン外相とデービスEU離脱担当相が相次ぎ辞任し、メイ政権が危機的窮地に立たされている。メイ首相が従来路線のEU強行離脱から柔軟路線にシフトする閣内合意を得たと発表したからだ。それはウソだとジョンソンとデービスが空かさず行動に出た。これまでの経緯を振り返ると見えてくるものがある。2年前、英国はEU離脱か残留かで揉めていた。時の首相で残留派であったキャメロンが、残留派が勝つと見越して、いきなり国民投票に打って出た。ところが案に相違して負けてしまった。その結果キャメロンが辞任し、その後を継いだのがメイ。本来であれば誰しも離脱派を主導したジョンソンが首相になると思っていたはず。でも、残留に投票したメイが離脱のための首相に就いた。この辺りから英国の混迷が始まったのだと思う。2年間でEUとの契約条項を決めなくてはならない。形式的な期限は来年の3月だが、実質的には今年の10月まで。もうあと3か月しか残されていない。この行方はどうなるのだろうか。メイは自分の考えを表に出さず、政治家同士で馴れ合うことを良しとしないため「氷の女王 the Ice Queen」と呼ばれている。メイの過去を振り返ると、国民投票で残留を支持、首相になって離脱派に寝返り、しかも強行離脱を推進、そして今度は離脱派の柔軟路線に転身。要は、誰が見ても信念が無く風見鶏というか浮草なのだ。信念を曲げない「鉄の女サッチャー」とは全く違う。2年前から結果は分かっていた。氷の風は冷た過ぎてリーダーとしての素質に欠ける。強行離脱派のジョンソンは、EUとの合意がない「無秩序離脱」を手に入れることになりそうだ。ジョンソンは果たしてこの結果を見越していたのだろうか。でも混沌の極致。