放送規制改悪

安倍首相の肝入りである規制改革推進会議の放送規制改革の原案が明らかになった。テレビなどの放送事業とインターネットの通信事業で異なる規制を一本化しようというものだ。簡単に言うと放送事業が規制されている「政治的公平」を定めた放送法4条を撤廃し、通信事業と同じ自由度を持たせようというもの。安倍はAbemaTVに出演し、何の規制も無く自由に発言出来ることが甚く気に入ったようだ。更にふた言目を言うと、米国では30年前に同じような規制を撤廃し、偏った放送が目立つようになった。トランプがCNNをフェイクニュースだと目の敵にし、一方FOXを愛でているのがその典型例だ。だが放送法4条は、政治的公平だけでなく公序良俗、正確な報道も求めている。だから野田総務相は撤廃に反対している。この放送規制改革が、それだけの問題であれば解決はそう難しくはないはずだ。ところが、最近の法案は一度に沢山の内容を纏め過ぎる。総論賛成各論反対でも、各論が成立してしまうのが問題だ。働き方改革法案は8つの法案を束んで、姑息に裁量労働制を通そうとした。放送規制改革の原案も同じスキームだ。放送法4条の撤廃に絡ませて、放送設備の管理部門と番組の制作部門の分離とNHKのネット同時配信の本格化を抱き合わせている。詳しく言うと、民放には管理部門と制作部門の分離を強いるがNHKには分離しなくて良いとし、更にNHKのネット事業の拡大(=料金の徴収範囲拡大)を含んでいる。これでは民放は衰退し、NHKだけが益々肥大化する。規制改革とは名ばかりで、安倍にとって目障りな民放を潰し、政府の介入が可能なNHKだけを強化する規制改悪と言えそうだ。