スパン次第のロック解除

アップルのクックCEOがFBIからのiPhoneロック解除要請を頑なに拒否している。何故頑なに拒否するのだろうか。事の起こりは、カリフォルニア州の銃乱射殺人テロ。福祉施設を襲って職員ら14人を銃で殺害し、22人を負傷させた痛ましい事件だった。犯人はiPhoneでイスラム国と連絡を取っていたという。FBIはその内容からイスラム国との関係を解明したい。でも犯人のiPhoneにはロックがかかっている。ところがiPhoneには、ロック解除のやり方を10回連続失敗すると全ての情報が消えてしまう仕組みになっている。下手に手を出せない。だからFBIはアップルにロック解除の要請をしたようだ。だがアップルは、一度許せば、なし崩しになると拒否しているとのこと。常識的に考えれば、非常事態であるのに拒否するアップル側に無理があるように見える。ところが、この話には前段がある。あのスノーデンだ。スノーデンがNSAの世界的な監視活動を暴露した一件が背景にある。それ以前グーグル、マイクロソフト、フェイスブック、ヤフーと共にアップルもNSAの監視プログラムに協力していたことが暴露されてしまったことは記憶に新しい。その後これらの会社は暗号化を徹底し情報提供と決裂した経緯がある。この経緯を考えれば、アップルが頑なに拒否することも肯ける。問題の始まりを決めることは難しい。例えば、中国は6千年の歴史をベースに論拠を構成するのが常套手段だ。だからチベットも南沙諸島も中国のものだと主張する。中東の紛争も、戦後に英仏などが変な線引きをしなければ、今のような紛争は起こっていなかったのかもしれない。要は因果関係の起点をどこにするのかのスパンにある。スパン次第で正義にもなるし悪にもなる。アップルとFBIの対決は、最も短いスパンでの紛争とも言える。スパンの長さを解釈するのは自由だが、今は常識的にはアップルの方が正しいように思う。でも世界はどのような判断を下すのだろうか。