手書き文字が市民権を

もう40年近くも前の事だが、出張先の新宿で占いおばさんに手相を見て貰ったことがある。第3子は女の子になると言う。それを信じて一生懸命女の子の名前を考えた。女の子らしく「愛」という名前にしようと決めた。今は生まれる前から性別が分かるが、当時は分かる術はなかった。出産間近になり、もし男の子だったらどうしようと不安になった。男の子で「愛」という名前は拙いだろうと思い「愛」がダメなら「純」だとエイヤッと決めた。結局占いは外れ、男の子が生まれ「純」と名付けた。市役所で出生届に「純」と書いて提出したが、クレームがついた。「純」の糸偏の「小」の部分を「川」と書いたのだが、正しい漢字ではないと言う。結局書き直し「小」に直して提出した。我が家ではカミサンが書道の先生なので、子供たちは小学生の時に習字を習っていた。自分もふざけ半分に「薬」という字を書いてみた。これが意外と上手い。これトウサンが書いたんだよと長男に見せると意外な言葉が返ってきた。「薬」の「木」の下が「はねている」から間違いで、正しくは「とめる」だと指摘された。手書き文字は難しい。文化審議会漢字小委員会が、手書き文字の細かな違いはOKにする答申案を纏めているという。指針案では、漢字の点画の長短や方向のほか「つけるか、はなすか」「はらうか、とめるか」などを幅広く認めることになる。遅きに失したが文科省も時代の変化に追いつき始めた。手書き漢字も、やっと市民権を得たようだ。