弓馬術と茶道の作法

「一流の人はなぜ姿勢が美しいのか」という本があるらしい。「らしい」と言うのはその本を読んだことがないからだ。PRESIDENT という雑誌には、その著者である小笠原流三十一世宗家小笠原清忠という人の薀蓄が書いてある。人の歩幅は畳の幅90cmには合わない。畳のヘリを踏まないように歩くことは不自然だから気にせずに踏めと言う。それが姿勢を美しくするコツだと指摘している。しかし、敷居や閾を踏んではいけない。何故なら敷居と柱は家を支えている重要な構造の一部だからだ。敷居は踏む度に歪むことになるが、畳のヘリは傷んだら張り替えが利くからと言う。だが、茶道の世界では違う。決して畳のヘリを踏んではいけない。ヘリは結界を表している。ヘリのこちらと向こうでは世界が違うのだ。ここ数年間茶道を習って、畳のヘリを踏まないことは、無意識レベルで身に付いた。茶道を習って、姿勢が悪くなったなどとは聞いた事も無い。寧ろ茶道は姿勢を美しくさせることを実感している。勿論茶道でも、敷居を踏むことなどあり得ない。小笠原流は室町時代からある由緒正しい弓術、馬術、礼法の流派とのこと。何故畳のヘリに拘るのか良く分からない。どうやら小笠原流というのは、科学的合理性に徹し、精神性を排除した流派のようにもみえる。そう考えると「三十一世」という文字が眉唾ものに見えてくるのは自分だけなのだろうか。