事実と事実から生まれる嘘

フジテレビがまた放送倫理・番組向上機構BPOに訴えられた。訴えた人は、自転車事故で母親を亡くし高額の賠償金を得た人。自転車は軽車両で車両の一部。免許は不要だが重傷死亡事故を起こせば高額な賠償金が請求されることになる。フジテレビの訴えられた番組は、事実のみで構成されたドラマというコンセプトで製作しているという触れ込みだ。テーマに近年増え続ける自転車事故の深刻さを伝えることを選んだ。訴えた本人には、自転車事故の重大性を訴える内容との説明をし承諾を取った。ところが実際に放映された内容は、本人が高額の賠償金を得たというインタビューに続き、自転車事故が賠償金目当ての「当たり屋」だったという内容の再現ドラマだった。これでは誰が見ても被害者である訴えた人が「当たり屋」だと思ってしまう。本人は虚偽放送だとBPOに訴えた。フジテレビは、本人に不快な思いをさせたことは謝るが、当該番組は複数の取材や専門家の監修に基づき制作しており虚偽放送ではない、と言っている。確かに一つひとつは事実なのかもしれない。だが賠償金の次に当り屋が続けば、事実ではなくなってしまうのも事実だ。フジテレビの欠陥は、テーマを自転車事故が増え続けることにするのか、賠償金目当ての当たり屋にするのか絞りきれなかったことだ。更に監修の専門家の常識が欠けていたことだろう。フジテレビは民放の中で最も低迷している。泥沼は当分続きそうだ。