水清ければ・・・

「水清ければ魚棲まず」という諺は、あまり清廉過ぎるとかえって人に親しまれないことのたとえだが、文字通り瀬戸内海では海がきれいになり過ぎて魚がいなくなったと漁師がこぼしているらしい。水質改善が進み植物性プランクトンを育てる窒素やリンが減り、海が貧栄養化したためではないかとの推測もある。瀬戸内海では高度成長期に工場排水で富栄養化が進み赤潮が頻発したため、工場排水規制や下水道整備を進めた結果窒素量が半減したのは事実だ。確かに水質改善度と漁獲量は比例関係にある。しかしだからといって因果関係があるとは言えない。魚が減った理由は、魚の餌が少なくなったのか、魚が住みにくい場所になったのかのどちらかだろう。餌である植物性プランクトンを増やすには、カキ養殖の畠山さんが実証したように海に流れ込む川の上流の森を育て海の栄養素を作ることも大切だ。魚の住みやすい場所を作るには、コンクリートで固めた海岸線を砂浜に戻しカニや貝が生息できる干潟作りが必要だし、魚が集まり易い漁礁の設置や海藻を増やすことも必要だ。またノリ養殖で使う魚が嫌がる薬品の使用規制も必要だ。漁業関係者にとって「情けは魚の為ならず」ということだろう。魚を獲る前に海を育てる心構えが必要だ。