原子力規制法案の魂

自民が訳もなくただ反対する態度から一転して、政府案への対案を出したのは政治活動として好ましい傾向だ。原発規制をしっかりさせるため保安院と原子力安全委員会を統合し環境省の外局にしようというのが政府案。しかしこの案は単に組織を付け替えるだけなので実質は現行と何も変わらないし規制強化の期待も出来そうもなくその場凌ぎに過ぎない。一方自民の対案は環境省の外局ではあるが人事や予算で独立した権限を持つ原子力規制委員会を新設する。国家行政組織法第3条に基づいて設置される所謂三条委員会なので、公正中立性や専門性を有し内閣からもある程度独立した地位を持つことになり、関係官庁への勧告も出来る。委員は国会の同意を得て首相が任命するので官僚のやりたい放題にはならない。自民案は政府案より格段に優れており、さすが数十年間も政権を担当してきた実力を窺わせるものだ。しかし優れている自民案もこのままでは「仏作って魂入れず」になってしまうかもしれない。まずはエネルギー行政の基本計画を立てることが先決だ。その中で原子力をどう位置づけるのか決断しなければならない。従来路線を変更するには原子力推進の錦の御旗である原子力基本法の廃止が必須。原子力基本法廃止なくして魂が入ることはない。