偽ゆとり教育から真ゆとり教育へ

2020年度以降に導入する文科省次期指導要領が、再び「ゆとり教育」に逆戻りするのではないかと懸念されている。アクティブ・ラーニングの導入が予定されているからだ。1998年から「ゆとり教育」になり、学習内容が簡素化され、授業時間が短縮された結果、学力低下を招いてしまった。「ゆとり教育」ではなく「ゆるみ教育」だと批判され最近やっと授業時間を増やし「脱ゆとり」の道を歩み始めたところだ。「ゆとり教育」の失敗は、元々の「ゆとり教育」の理念を導入した授業内容に変更することが出来ずに、学習内容の削減と週休2日制に明け暮れたことだ。本来の「ゆとり教育」の推進を目指してきた宮台教授が「日本の難点:宮台真司:幻冬舎新書」で、失敗した原因を解析し、改良すべき方向を示している。本来の「ゆとり教育」とは、従来暗記に使っていた時間の一部をクリエーションやコミュニケーションの能力開発に結び付くような時間に転用することだった。失敗の原因は、教員や親などの現場が理念を理解していなかったこと、学習内容に国が介入し過ぎていて自由度が無いこと、ゆとり教育を指導出来る教員が育っていないこと、最小限必要である学習指導要領を最大限と誤解したこと、と指摘している。今後海外の教育先進国を勉強すべきだと言う。フィンランドやシンガポールは、制度にフレキシビリティがあり、能力別編成を止め、グループワークを重視している。しかも授業時間は日本より短いという。馳文科相は「ゆとり教育」に戻るのではないと宣言した。内容は「ゆとり教育」の本来の理念に戻るということなので、一歩前進ではある。だが、日本の教育を教育先進国レベルに引き上げるには、気が遠くなる程の隔たりがある。自分は「ゆとり教育」を、知識教育に体験教育を加え、受動的姿勢を能動的に変える教育だと理解している。そうならば「ゆとり教育」の失敗の大元は、ネーミングが不適当で誤解が生じ「ゆとり」が独り歩きを始めてしまった結果だと思う。